書名:顎関節症ー生理的咬合の判定基準ー
(歯科ブックレットシリーズ35) 著者:藤田 和也(歯科医師)
出版元:株式会社デンタルフォーラム社
定価:6,500円+税
注文先:フリーダイアル0120-418-604
本書の内容が少しでもわかるように全体の文章のみを載せました。600点以上ある写真・イラストも、いずれ公開予定です(かなり先になりますが)。興味のある方は、お買い求めになると幸いです。なお、文書中のとくに写真や図の番号が正確に表示されていませんが、現時点では写真・図がありませんので、そのままにしています。ご容赦下さい。
日本補綴歯科学会補綴学用語集において、顎関節症は顎機能異常や顎口腔系機能障害の同義語とされています。顎口腔機能の主たるものの一つは摂食機能、すなわち上下顎歯列における咬合であると考えられます。この咬合について同用語集では、咬合の調和とは「咀嚼系の解剖学的おとび生理学要素と調和した咬合状態」、咬合の不調和とは「咀嚼系の解剖学的おとび生理学要素と調和していない咬合状態」と定義されています。そして、機能的不正咬合とは「1)下顎安静位から閉口時に早期接触があり、前後左右いずれにかに偏位して不正な位置に咬頭嵌合する咬合、2)歯によって決定される咬頭嵌合位と、筋や顎関節などによって規制される下顎位とが一致していない咬合」と定義されています。
この用語集の定義から考えられることは、顎機能異常がある患者の多くには咬合の不調和が存在し、顎顔面部の筋痛や、顎関節痛、開口障害、関節雑音等を主訴とする場合に顎関節症と診断されるのではないかということです。
調和した咬合状態を示す概念の一つに、中心咬合位(CO)というものがあります。1995年の用語検討委員会案では中心咬合位(CO)は「新しい中心位(CR)の定義における下顎位である」とされれています。以前中心位(CR)は「下顎が最も後退した位置で生ずる下顎位」とされていましたが、今回の委員会案で「下顎頭が関節円板を介して下顎窩内の前上方位(関節結節の後方斜面)にあって歯の接触と無関係に位置付けられる上下顎関係」と新しく定義されました。
ひるがえって我々の日常歯科診療を見てみますと、顎関節症の治療の最終目標である中心位(CR)の咬合採得法は、スプリントを用いる方法、ドーソンのバイラテラル法を用いる方法、ゴッシックアーチを用いる方法、EMGバイオフィードバックを用いる方法、マイオモニターによる下顎神経の電気刺激法を用いる方法等さまざまな方法論が存在しています。
私はこれらの方法論について検討を加えました。その結果、マイオモニターによる下顎神経の電気刺激法を適切に用いることにより、下顎位を新しい中心位(CR)の定義に示される下顎頭の位置に誘導することが可能であることが判明しました。そしてその誘導された下顎位は下顎安静位からしずかに閉口した位置と一致し、その下顎位で咬合の再構成を行うことにより、歯によって決定される咬頭嵌合位と、筋や顎関節等によって規制される下顎位を一致させることが出来たのでした。
新しい定義による中心位(CR)では、閉口筋(咬筋と側頭筋)の筋活動は調和した状態に回復し、下顎頭の運動障害は明らかに改善しました。さらに良いことに顎関節症による症状が著しく改善されていきました。この結果を基に私は、上下顎歯列の模型分析、表面筋電図による筋活動のパターン分析、アキシオグラフによる下顎頭の運動経路のパターン分析の3つを用いた生理学的咬合の判定基準を作成し日本顎関節学会で発表しました。そして、広島歯科研究会や東京歯科研究会での4年間のセミナー活動や講演活動などで普及すべく努力をして参まいりました。しかしながら力不足のため、この補綴歯科学会による最新の中心位(CR)の定義に対する生理的咬合の判定基準を広く世の人々の知る所とは出来ないでいました。
そうしたところ、デンタルフォーラム社の中務進一郎氏が本にまとめることを承諾してくださいました。
これから私の生涯をかけて心ある人々に伝えさせて頂く所存でございます。どうかよろしくお願いします。