顎関節症患者の方の治療について、健康保険組合の定期機関誌「すこやかファミリー」96年の10月号17Pに掲載された「からだチューンナップ・ガイド」の記事を引用して、その概要を説明します。 この内容は、同雑誌の記者の方が、藤田歯科クリニックに取材、インタビューしてまとめたものです。
食事をしようとするとあごの関節が痛くなる、口が大きく開かない、口を開けると音がするなど、顎関節症に悩む人がふえています。顎関節症は、めまいや全身的な疲労感といった症状をひきおこすこともあり、早めに適切な治療を受けることが大切です。
今回は、藤田歯科クリニックの藤田和也先生が行っている新しい治療法を紹介します。
かみ合わせのずれは、歯の治療のために入れた冠や入れ歯が合わなかった場合、あるいは、顎関節症が悪化しているのに不用意にかみ合わせの治療だけを受けたとき、おこりやすくなります。しかし、自覚症状は少ないため、ずれたかみ合わせはしだいに習慣になってしまい、悪化すると頚椎や脊椎などがゆがむ場合もあります。
まず、いすに座って軽く口をあけた状態で、下顎神経に2秒間に1回のリズムで弱い電流を加えます。電流によって筋肉が規則的に収縮し、タッピング(かむこと)がおきると、あごの関節に生理的な力が加わり、正しいかみ合わせの位置に誘導されていきます。
首と後ろと左右の耳の前の全部で3カ所に電極をとりつけ、下あごの内側にある下顎神経に向けて電流を加える。このときのあごの筋肉の動きは、筋電図で確認できる。
電気刺激による咬み合わせの記録
このとき、顔の左右にも、筋電図測定の電極をつなぎ、咀しゃく筋がバランスよく動いているかどうか確認します。患者自身も、筋電図測定測定装置の画面を見て、正しいかみ合わせの位置で筋肉が動く感覚を覚えていきます。
「下顎神経の電気刺激法は、いすに座って行うのがポイントです。ふつう歯の治療というと、患者さんは仰向けに寝かされますが、これでは正しいかみ合わせでの位置を決めることはできません。私たちは直立歩行している生き物ですから、座った姿勢のほうが自然により近いのです。」(藤田先生)
電気刺激を行いながら、マイオプリントという材料を歯の上に流し、固まるまで5から10分間タッピング運動を続けます。これによって正しいかみ合わせでかめる、歯の高さや位置がわかります。その位置を基準にして冠や詰め物をつくり直し、かみ合わせを修正します。治療はつねに、顎運動測定器や筋電図でかみ合わせをチェックしながら進められます。
正しいかみ合わせで口の開閉ができているか、顎運動測定器で再確認する。
顎運動の測定
こうした治療法によって、以前顎関節症に悩まされた藤田先生自身も含め、患者さんの9割以上の人に、改善がみられるそうです。
からだの関節や骨にも異常がみられる場合は、必要に応じて治療用のいすによる整復がおこなわれる。
脊椎の整復